父親との死別で塞ぎ込んでいた『天才小学生』朝川桂一は、ある日『神様』を自称する巫女服姿の少女と出会う。
少女との交流の中で、桂一は将棋のプロ棋士になりたいという自らの夢を思い出していく。
夏×伝奇×将棋!
『夢』をテーマにしたノスタルジックな青春ノベルゲームです。
ゲームポイント
プレイ時間:3時間程度
選択肢分岐、イベントCGアリ
[夏ゆめ彼方]の詳細
- 頒布形態
- フリーウェア
- カテゴリ
- アドベンチャー・ノベル
- 年齢制限
- 全年齢
- 対応OS
XP Vista 7 8 10
- 制作者
- ペットボトルココア
- SNS
- X(Twitter)
- 本体サイズ
- 293MB
- Version
- 1.0
- 最終更新日
- 2017年9月 6日
- お気に入り
- 票2票
最初にそれぞれの項目の評価をさらっと。
*シナリオ
将棋がテーマですがメインとなるのは夢。
さらに良いものに出来た筈というのが正直な感想です。下でいろいろ書いたので詳しくはそちらを。
わかりやすくしましたが途中からネタバレ全開なため未プレイの方は注意。
*グラフィック
なぜこの人物に立ち絵が無いのかという点はともかく、キャラクターの絵は良いし好きです。
何より表情パターンが豊富で素晴らしい。シナリオの没入感にも繋がっています。
*サウンド
ごめんなさい音楽はタイトル画面くらいしか印象にないです。印象深いのは蝉の鳴き声。
*システム
オーソドックスなノベルゲーでゲームシステム的に特筆するところはありません。
プレイは快適です。不満はナシ。
*オリジナリティ
将棋がテーマであることと詳しい対局シーンを高く評価。
一流棋士である父との死別で塞いでいた才ある小学生の主人公が、
自称神様の少女と出会い交流する中でプロ棋士になるという夢を再び。そんなストーリー。
この物語の根底にあるのは夢。ありがちに感じるかもしれませんが、
夢を追い、現実に向き合う中での喜びや苦しみ、葛藤といった心情描写がリアリティがあり素晴らしい。
主人公の夢の行方は。
びっくりしたのは将棋の対局場面。
将棋をテーマにした物語というところに惹かれてプレイしたのですが、
かなり詳しく書かれているのは驚きでした。臨場感もすごいしとても良いです。
主人公が脳内説明してくれるとは言え専門用語が結構出てくるので、
ある程度、将棋の知識があるとよりこの作品を堪能できるでしょう。
ここまで書いたように良いお話ではあるのですが、惜しいのはゲームの短さ。
描写不足、あるいは話の展開が急ぎすぎていると感じる部分もありました。
ここからめちゃくちゃネタバレになります。
事実上の二部構成であるこの物語。もっと長く濃くするべきだったことは確信を持って言えます。
杏との交流で主人公が変わっていく様、大吾たちと仲を深めていく過程をもう少し丁寧に描き、
何気ないものでも家族の、特に母親の描写を増やす。
気になったところをあげましたが、最低限それだけでも
アフターの落差の衝撃度、それに彼らの言葉がより心にくるものになり、
最後も一層感動するものになったのではないでしょうか。
ただ。その最後の再び夢に挑む過程がダイジェストに近いのはちょっと物足りない。
ここはもっと書いたほうがよかったように思います。
杏と再会し挫折から立ち上がる描写は素晴らしいものがあるのですが。
あと、夢を追わないifを入れたかったのは察しますが、歌音ルートを入れるなら。
もっと言うと歌音というキャラを入れるなら、メインに厚みを出すのを優先すべきだったのでは。
理由としては、本筋にほぼ関わらないキャラな上に将棋が全く関係なくなる事。
キャラ設定と話の進行が、気になるくらいにはご都合的で強引な事。そして、この作品全体の内容と構成。
話自体が悪くないのは救い。
キャラクターについて最後に。
皆個性があって全体的に見れば良いです。妹は好みが分かれるでしょうが。
主人公を筆頭に年齢にそぐわない面は気にしないほうが楽しめます。
ノベルゲームなのでシナリオ関係が大半を占めるものになりました。
現状でもいいゲームではあります。ありますが。
でもやって良かった作品だと言い切れます。感謝。
将棋のプロ棋士を父親に持つ天才将棋少年の主人公桂一は、父親の死後ふさぎこみ将棋からも離れてしまったが、神様を名乗る少女杏と対局したのをきっかけに将棋への情熱を取り戻し将棋に邁進していく……
と、本作のストーリーをまとめるとこういった内容です。これだけ聞くとよくあるパターンに見えてしまいますが、私がオリジナリティを5点にした理由は、これほどまでに天才の努力と葛藤をまっすぐに表現したノベルを初めて見たからです。天才とはいえ常に順調なわけではない。夢と現実の間でたくさん悩むわけです。そこの描写がリアルでとても説得力があります。主人公が天才であるタイプのゲームは人間味が感じられないことが多いように思いますが、本作の主人公桂一はいい意味でとても人間っぽく好感が持てます。
脇役たちもとても魅力的ですね。大悟もこの年頃の男の子っぽさにあふれています。彼を含んだコメディシーンにはいっぱい笑わせてもらいました。また選択肢によって歌音のルートに分岐しますが、こちらは夢と現実の程よい妥協案になっています。夢を持つ人は多くともそれが叶う人はごく一部なわけで、それでも幸せであるような道を提示してくれてホッとしました。
また本作では将棋のシーンが多く入っていますが、これがとても熱が入っています。私は将棋はルールを知っている程度なのですが、桂一と杏の対局シーンから伝わってくる真剣さと熱意が私をさらに物語に引き込んできました。将棋の戦術などを知らなくても、作中で戦況の解説が入るので心配はありません。もちろん知っているとまた違う楽しみ方があるのではないかと思います。
グラフィックも可愛らしくて良いです。私は晴香が好きです。
BGMも場面場面にあった音楽がチョイスされていると思います。
総じてレベルの高い作品だと思うので、ぜひ多くの方にプレイしてほしいなと思います。
感動、そして温かい気持ちになること間違いなしです。
「あいつ、僕と結婚するんじゃなかったのか」(17年後)
●シナリオ
センチメンタルハートウォーミングストーリー。
サクセスストーリーの作品は数あれど、これは趣が異なり、まさかの展開。
将棋の知識や生々しい描写から作者さんは同じ経験をしたのかと勘ぐるほど。将棋のこと分からなくても雰囲気にリアリティーが感じられ惹き込まれる。
コメディーも面白く、何度も笑わせてもらいました。センス感じます。天才か。
それの影響もありキャラ萌えもある。
伝奇要素は雰囲気、演出で、ガッツリではないので、注意。
どちらのルートも道であり、観て欲しいと思います。
●グラフィック
技術というより好感が持てる絵柄。これもセンスか。花音、晴香萌えるまじやべえ。
背景も田舎の自然が綺麗です。
●サウンド
BGMとして違和感なく。
神秘的な曲と対局時の曲が印象的。
●システム
ホイールバックログ、既読スキップで快適。
欲を言えばBGM鑑賞と禁断のルート実装あればパーフェクト。
●オリジナリティー
夢(挫折)をテーマにした作品はあれど、将棋ということ、その世界の掘り下げ、挫折のリアルさなど新鮮でした。
少し異なるが、エントランスソフトさんのビューティフルパフォーマーと並ぶ稀少さを感じました。
●トータル
将棋、挫折、コメディーの描写が魅力的(かわいいおにゃのこもいるよ)。
対象は大人の方がオススメかも。
オッサンのハートを揺さぶって切ない余韻にさせてくれた。笑えて、泣ける作品。
実際のDL数は分かりませんが、ぜひ多くの方にプレイして欲しいと思います。