瑞穂の國の魔術師

　自分が物語を書く時、いつもどこかで強く思っているのは「楽しむ作品としてだけじゃなく、心に残る作品にもしたい」ということでしょうか。
　読み終えた後、日常生活のふとした瞬間に「あの時のあれみたい」と感じた対象が自分の作品であってくれたら、報われる気がします。
　もちろん、これは自分の好みもあります。
　でも、みなさんが好きな物語にも、そういった要素が沢山含まれているはずと思うのです。

　それと、書く前には必ずテーマを決めているのですが、今作品では以下のような感じになりました。

　まずは「恋愛」です。
　自分の好きな相手が自分を好きになってくれる――これは、この世の奇跡のひとつだと思います。本当に。
　でも、気がつくと忘れてしまったり、当たり前になってしまう。
　それはもったいなくて、一度は自分の作品の中で大声で叫んでみたかったというのがあります。

　後は「決断」です。
　決断に至る葛藤などにも、大きくスポットを当てています。
　決断というのは、それだけ重要なものだと思います。
　例えば人生だって、決断（選択）の連続で作られると言っても過言ではありません。
　けれど、そんな大事なことであっても、学校はもちろん、身近な人からであっても、ちゃんと教わったような気がしないのはなんで？という、なんというかモヤモヤした感情が今もあります。
　それなら――ということで、この作品を機会に自分なりの結論を描きました。

　最後は「家族」です。
　家族がなにかについては、人それぞれに形（答え）があると思いますので触れていません。
　ただ良い意味でも悪い意味でも、一生外れない、どこまでも伸びる鎖で繋がれた関係を、家族と言うのは確かだと思います。
　そこをあまり誇張せず、等身大に近い関係を描いたつもりです。
　また恋愛模様には相手の家族が関わってくるようになっています。
　ええっ――という気になるかもしれませんが、親は子のアイデンティティの構成に最大の影響を与える存在ですから、どうしても絡ませたかったのです。

　以上、自分が十代の頃に知りたかった、教えて欲しかったことを詰め込んでみました。
　「なのにファンタジー？」と思った方も多いのではないでしょうか。
　実はそれにはちゃんとした理由（というかこの場合は思い入れ）があったりします。
　みなさんの感想をお待ちしています。