少女と妖怪がお化け屋敷からの脱出を目指す和風テイストあふれる異色のアドベンチャーゲーム。
少女が目を覚ますとそこは妖怪ひしめくお化け屋敷であった。不安に駆られ部屋を飛び出した少女の前に突然一匹の小さな獣が現れる。彼の名は妖怪「すねこすり」。突然の妖怪の出現に戸惑った少女であったが話を聞くうちに彼も外へ出たがっている様子。思惑が一致した彼らはひとまず屋敷の出口を目指すことに。ここから物語は始まる。
少女は妖怪に見つかってしまうと襲われてしまうが、書物やタンスや祠など高い所を調べたり道具を使うことができる。一方、すねこすりは高い所を調べたり、文字を読んだりできないが同じ住人である妖怪たちをやり過ごし、ジャンプを駆使して障害物を乗り越えることができる。プレイヤーは全く異なった特徴を持った彼らを上手く活かして怪物を欺き、障害を乗り越える必要がある。
舞台となる屋敷内にはいたるところに謎解きがちりばめられている。ほとんどの場合、解き方が複数用意されており、またヒントも多く存在するためプレイヤーによって進め方が異なってくるだろう。ゲーム中ではたくさんの妖怪が登場し脱出の障害となるが、中にはすねこすりのように協力的な妖怪もおり彼らの手助けを得ることも不可欠となってくる。
また、開始早々に少女とすねこすりは「雲外鏡」によって屋敷の陰陽、すなわち表裏に分かたれる。一方が陽にいるとき、もう一方は陰に位置し、逆の場合も同様である。この雲外鏡を通してプレイヤーは少女とすねこすりを交互に操れ、また互いの世界を反転させることもここでのみ行うことができる。陰と陽それぞれが同じ屋敷であるが、間取が反転しており存在する妖怪も異なるため一見違う世界のようである。しかし陰と陽は互いに密接な関係であり、どちらか一方に変化が訪れるともう一方にも影響を及ぼす。この要素は謎解きにも深く関わってくる。
本作はイラストチップから作りこまれており、目新しい妖怪たちや所々の書物、謎解きの合間から独特の雰囲気が醸しだされており純和風の世界観を構築している点は見事である。他にも謎解きに用いる道具が豊富に用意されており、中には役に立たないような物もある。また、屋敷内で出会った妖怪はすべて書斎の妖怪図鑑に掲載され、詳しい説明をみることもできる。
これらを集めきることは本筋とは関係ないが、目に見えてアイテム欄や図鑑が埋まっていくのはプレイヤーのやりこみ心をくすぐるだろう。エンディングはストーリーの進行度合い、所持アイテム、発生イベントの具合で違ってくる。どのエンディングも非常に興味深い結末であり、一概にどれがべストエンドといえない。余力がある方は是非全てのエンディングを見ることをオススメする。
≪ Reviewer / 玉原さん ≫